1.はじめに

2019年10月

東書文庫が抱える大きな課題の一つは、鎌倉時代から現在に至るまでの約16 万点におよぶ所蔵資料の「保存」「修理」です。「保存」にあたっては、書庫や展示室の温度、湿度、照度の管理を行い、酸化を防ぐために、所蔵資料を中性紙の箱に収めるなどの様々な努力を続けています。また、傷みの激しい所蔵資料の「修理」「デジタル化」にも積極的に取り組んでいます。

修理前:巻かれた状態の掛図

【修理前】巻かれた状態の掛図

明治期から昭和期に製作され学校用の大型教材として活用されていた掛図・掛幅は、洋紙に多色印刷されており、紙の酸性化に伴う劣化が著しい状態にあります。保存しているだけでも劣化は進みます。また、巻かれた状態で保存されていたものは、巻癖が著しく開閉が困難な状況です。

修理前:掛図 大正7 年(1918 年)刊行

【修理前】掛図 大正7(1918)年刊行

修理後

【修理後】

東書文庫が所蔵している国の重要文化財指定資料の修理については、株式会社修護*1が行っています。

東京文化財研究所内にある「修護」のアトリエ

東京文化財研究所内にある「修護」のアトリエ

独立行政法人国立文化財機構「東京文化財研究所」

独立行政法人国立文化財機構
「東京文化財研究所」

*1
株式会社 修護
国宝・重要文化財等の保存修理業者 一般社団法人「国宝修理装洸師連盟」加盟
修理実績:国宝 紙本墨書 島津家文書御文書の内 11 巻(東京大学所蔵)他
東京文化財研究所と近代紙資料の共同研究を行いながら修理を進めている。

(北澤清貴)