19.読本‐その1
日本の近代初等教育において、児童生徒の人格・思想形成に深く関係を持った教科は「脩身」と「讀本」である。今回から国定期の読本についてみてみよう。第一期の読本教科書の編集は、早くから準備された修身とは異なり、明治35(1902)年より教科書審査官吉岡
第一期の国定読本
尋常小學讀本一の訛音教材(イ エ、ヂ リ)
特色を見てみると、学習漢字は尋常小用で500字、高等小用まで含めても850字に制限されている。これは明治33年の小学校令施行規則を遵守している。ひらがな学習は二年生からとなっていて、カタカナが先習である。その理由は「發音ノ教授ヲ出發点トシテ兒童ノ學習シ易キ片假名ヨリ入リ…」とある。表記・表現面では、検定期後期に見られる棒引きかな(タロー、ガッコー)が多用され、口語文が多いという特徴がある。最も重要な方針は標準語教育である。先ず発音教育を出発点として標準語の確立の立場から
第一期の国定読本
明治38年、日本はローズベルト米大統領の斡旋による日露戦争講和条約(ポーツマス)に調印した。その結果、朝鮮半島と満州地方の実質的支配権及びサハリンと付属諸島を得た。欧米列強の仲間入りを果たした日本であったが、戦費捻出のための増税に苦しんだ国民は、賠償金が取れないことへの不満を爆発させ、各地で暴動(日比谷焼打ち事件など)を起こし、世情は暗転する。世情不安と戦後恐慌の中、政府は道徳心を強化する為「
*講談社日本教科書大系参照
※資料は全て東書文庫蔵
第二期の尋常小學讀本の水兵の母
第二期の尋常小學讀本の水師營の會見
(荒井登美也)