東書文庫は、平成11年(1999)3月に東京書籍印刷の工場・事務棟・守衛所と共に「東京都北区有形文化財(建造物)」に指定されました。鉄筋コンクリート造二階建ての建物で、書庫の部分のみ中二階を持つ三層の構造になっています。創建時は建物の前後にポーチ部分を有していましたが、昭和54年(1979)に書庫を増築するため、建物を延長したので裏のポーチ部分は滅失しています。

建物全体は、アール・デコ様式を基調とした意匠でまとめられています。全体的には直線的な構成でありますが、外へ半円状に突き出た応接室部分や、一階ホールの円形窓など曲線を使うことでアクセントを持たせています。

また、建物全面は黄褐色のスクラッチタイル貼り、建物入り口部分は四段の階段が付いたポーチ、正面に突き出た庇を二本の円柱が支えています。

庇、階段、柱いずれも表面に錆花崗岩が貼り付けられ、入り口部分の周囲も磨いた花崗岩で縁どられています。

アール・デコは大正14年(1925)にパリで開催された現代産業装飾芸術国際博覧会で花開き、これまでの手工的・曲線的なアール・ヌーボーとは対極で、幾何学的デザインを多く取り入れた装飾美術です。1910年代半ばから1930年代にかけてヨーロッパやアメリカを中心に世界的に流行しました。

東書文庫玄関の鋳鉄製格子図面 画像
東書文庫1階ホール円形窓の格子図面 画像

大変残念なことに、戦時中金属類の供出を強いられ、玄関ドアと一階ホールの円形窓にあった美しい装飾の鋳鉄製ブロンズ仕上げの格子が失われてしまいました。幸いにもその設計図が残っていますので掲載します。斜めの格子に同じ花柄があしらわれている美しいものでした。そして今でも文庫の南側には都電が走り、その優雅なたたずまいは昭和のレトロ感を醸しております。